狭山湖の夜、深い霧が辺りを包む時、それは前兆である――地図にない場所と「迷いの小屋」が現れる。霧の中から忽然と姿を現す見知らぬ道は、一度踏み入れたら最後、もはは逃れることはできない。
心霊スポット巡りに訪れた大学サークルのメンバーたちは、この霧の中でその道を見つけてしまった。不気味な静けさと白く煙る空気の中で、彼らは何かに引き寄せられるように道を進む。そして、道の先には「迷いの小屋」が待ち構えていた。何度通り過ぎても視界の端に現れ、ある条件が揃った時のみ扉が開く小屋。彼らはその条件を満たしてしまう。
小屋の中には、かつて村人たちが「蟲毒の術式」を行っていた痕跡が残る。儀式の名残が刻まれた道具と共に、冷たく湿った空気が漂う空間。地図に載らないその場所は、現世と異界が交わる境目だった。
蟲毒の術式とは、多くの生き物を閉じ込め、最後に生き残った一つに恐ろしい力を宿らせる呪法。村人たちは「コトリバコ」と呼ばれる呪物を使い、小屋に入った者たちの精神を蝕み、互いに争わせる。疑念と憎悪が渦巻く中、メンバーたちは次第に正気を失い、かつての仲間に敵意を抱き始める。
霧が小屋の周囲を濃く包み込むにつれ、彼らの心も視界も曇っていく。逃れようとしても、小屋は霧の中に現れ続け、もはや逃げ場はない。小屋の影が静かにほくそ笑む中、彼らは最後の一人になるまで争い続けるしかない。
ついに、唯一生き残った者が小屋を出る。その瞳には新たな「力」が宿っているが、かつての人間らしさはもはやどこにもない。冷たく光る狂気が宿ったその目は、霧の中へと消えていく。その後ろ姿が最後に見える時、霧がさらに深くなり、狭山湖の夜は再び静寂に包まれる。