当時、入社して最初に配属された店舗は市内の繁華街の中心地にある。その店舗は夜中の方が昼間よりもお客様が多い立地であるため、勤務も夜が中心となった。
客層は実にバラエティ豊かで、仕事帰りの酔っ払いから夜の蝶（水商売）の方々、そして人生にちょっと迷子になっているような方々(ホームレス)まで、まるで夜の動物園のようであった。
これらの多彩な集団が一つに融合されることで、店内はまさしく【混沌（カオス）】の舞台となるのである。
以下は午前２時の店内の一こまである。
社員A「いらっしゃいませ。少々お待ちください。」
レジには夜の蝶たちがずらりと並び、まるでナイトクラブのVIP待ちのような光景が広がっていた。
すると、従業員から突然報告がある。
従業員「A副店長！イートインスペースでお客様が回転寿司みたいになってます！」
社員A「ん？どゆこと？」
私は妖艶な香りが漂う蝶たちのトンネルをくぐり抜け、問題の場所へ向かった。
そこには、【通称：落武者(ホームレス)】がいた。
落武者「ヘイヘイヘーイ♪」
彼は頭を軸に使い、逆さまの状態でクルクルと回転していた。その速さは、まるでヘルメットをかぶったラッパーをも超えるほどだった。
周りには酔っ払いが集まり、まるでスポーツ観戦のように声援を送っていた。
酔っ払いたち「いけいけー！最高ー！」
社員Ａ「あのぉ・・・お客様!!周りのお客さまの迷惑になりますので・・・」
落武者「ヘイヘイヘーーーーイ♪」
社員Ａ「（従業員）Ｔさーん。警察呼んで――！！」
すると、間髪入れずに従業員Tより新たな報告がある。
従業員T「Ａ副店長、あっちでお客様が投げてます。」
社員Ａ「は！どゆこと？」
私が惣菜コーナーに目を向けると・・・
※グローブはイメージです。
ハイ!第一球振りかぶって投げ「ま」たぁ！
ズドン！ス「ロ」ライクゥ～ン!
深夜のコンビニ、惣菜コーナーで酔っ払いが一人。彼はまるで漫画のキャラクターのように一回転しながら、チキンを手づかみで掴み取ると、華麗なフォームでアイスケースに叩きつけた。滑舌も悪く、かなり酔っているようだ。
社員Ａ「お客様！やめてください！困ります。」
酔っ払いバカ投手「はい！もう一球いきまーす！」
社員Ａ「やめろって言ってるだろ！（従業員）Ｔさーん！警察まだ？」
泥酔したビジネスマンの男を押さえつける。
従業員T「副店長！！」
社員A「は！！今度はなんだ！」
と思わず声を荒げる。
従業員Ｔ「今来た女性のお客様デリヘルの人でチラシ置かせてくださいだそうです。」
社員A「・・・あのさ。お前さ、今の状況分かってる？」
とにかく警察呼ぶのが先だろうがー！
すると、従業員Tがこう言い放った。
だって、僕！
あそこ(デリヘル)の常連なんです！
そこぉ～
お前くびにすんぞ！早く警察呼べ！ぼ〇が！
自分は穏やかな人間だと思っていた…しかし、環境は人を大きく変えるものだ。この状況を収めるには強気で進むしかない！
私は鬼だ
・・・
鬼になれ！
覚醒：社員鬼化
その後、警察がやっと到着し、その場は収束へ向かうこととなる。
・・・
デリヘル狂い「やっと落ち着きましたね。ところでＡ副店長、先ほどの件（デリの件）、仕事が終わってから僕、店に行くのでチラシの件伝えていいですか？」
社員A「・・・(消えろ)」
環境の変化からわずかの期間で学生が鬼になるまでは半年とかからなかった。私はめでたく入社半年目で一回り年上の従業員に引導（くび）を渡したのだ。
・・・
次の日、酔っぱらい投手が謝罪しに来た。そこで被害金額を回収。
真面目そうに見える彼だが、昨日の一件で彼の本性を知っている私は内心はらわたが煮えくり返っていた。そこで、「防犯カメラに映ったバカまるだしの映像」を見せてやることにした。彼は警察でたっぷり搾られたのか、終始謝るばかりでまるでしおれた花のようだった。
はい！もう一球いきまーす！
・・・もう何も言うまい。映像が答えだバカ者！
そして風の便りで聞いたのだが、「落武者」のホームレスが、なんと麻薬所持で見事に刑務所送りになったとか。
めでたし、めでたし！もうシャバに戻ってくるなよ。
しかしまだこの時には私は気付いていなかった。この【夜のカーニバル事件】で鬼と化したことが、後に「あのおぞましい事件」を招くとは・・・(つづく)
ガチで底なしのカーニバルですね😂